本シリーズの第1部では、コンテンツマーケティングの動向、企業が抱える課題と取り組むべきことについて紹介しました。第2部では、コンテンツ・エンジニアリングの活用とそれがもたらすメリットについて紹介します。
コンテンツ・エンジニアリングの活用:あらゆる顧客接点に対応
様々な顧客接点を横断して、マーケティングからコンテンツ配信、顧客コミュニケーションにおける全行程の効率化に取り組む企業は、新たなテクノロージーを活用したアプローチを展開しています。将来を見据えたコンテクスト・マーケティングの実現には、システムの整備が欠かせません。
多次元のコンテンツ・エンジニアリングこそがカギを握る
コンテンツ・エンジニアリングは、従来の管理アプローチのフレームワークをはるかに超えています。包括的なコンテンツ・エンジニアリング戦略における重要な要素の1つは、顧客とのコミュニケーションに関わる社内リソースの把握とワークフローの定義です。つまり、 「標準化・統合・一元管理」、これこそが、企業の包括的なブランドコミュニケーション戦略を成功させる基盤であり、コンテンツ・インテリジェンスを最大限に活用する推進力であると言えます。
包括的なコンテンツ・エンジニアリングでは、様々な地域、言語、チャネルにまたがる情報や業務プロセスが、チャネルやデバイスに依存しない方法で統合管理されます。その例を右図で示しています。ターゲットグループや企業のブランドメッセージ、言語などの重要な側面は、フォーマットレベルで定義されます。形式的/構造的に標準化された特定の情報要素が個々のモジュールに含まれます。商品や顧客に関する重要な情報、ターゲットグループに関連するコンテンツがマスターデータ管理によって提供・維持・統合されるなど、システムレベルでデータ管理が実行されます。
コンテンツ・インテリジェンスとは
「コンテンツ・インテリジェンス」とは、コンテンツの全体像に注目した用語です。従来、別々に扱われてきたコンテンツ管理とビジネスインテリジェンス(BI)の領域は、データと考え方との面で同時に扱われる傾向が高まっています。例えば、商品や顧客情報など、BIからの構造化データが、マーケティングや製品開発部門からの非構造化デキスト情報と組み合わせたデータになりつつあります。
コンテンツエンジンが媒体制作の中核をなす
標準の CMSまたはPIMソリューションでは、コンテンツの制作、あらゆる顧客接点で一貫したコンテンツを配信し続けたい企業の「理想となる目標」がもはや到達できなくなってきています。その基礎をなすプロセス自体が非常に複雑になっており、新たな戦略の実行、新たなメカニズムやソリューションの導入が必要とされています。
革新的なコンテンツ・エンジニアリングの技術基盤は、顧客とのコミュニケーションと媒体制作業務を総合的にサポート・コントロールするコンテンツエンジンによって構成されます。つまり、ワークフローやユーザ権限管理により、媒体制作に関わる各関係者に必要な機能を提供することで、分散したプロセスを統合し、標準の業務プロセスを確立するコンテンツエンジンがベースになります。
インテリジェントなコンテンツエンジンの主な特徴
包括的なコンテンツエンジンの最も重要な8つの特徴:
- ワークフロー管理:業務プロセスに基づいて独自のワークフローをデザインすることが可能
- ユーザ権限管理:ユーザの役割/権限に基づいたアクセス制御、アクション設定による包括的なステータスレポートを含む拡張性に優れた協業作業が可能
- テンプレート機能:統一のフォーマットやテンプレートを提供
- マスターデータ管理:完全/部分的な自動化によるアセット管理・メンテナンスが可能
- 履歴管理:変更履歴をバージョン単位で管理し、承認プロセスも効率よく実行可能
- システム間連携:ERP, CRM, PIMなどの既存システムと連携・統合が可能
- 標準インターフェース:ソーシャルメディアプラットフォームやSEO、広告アプリの自動制御
- 統合管理:各部門、各システムに散在するデータ・リソースの統合管理による相乗効果
企業にもたらす利点:コンテンツ・マーケティングのしっかりした基盤
強力なコンテンツエンジンがあれば、コンテクスト・マーケティングを実行するプラットフォームとして機能し、コンテンツ管理を新たなレベルまで引き上げることができます。標準化・統合管理・自動化された媒体制作プロセスによって、コンテンツと人的リソースを適切に活用し、生産性や効率の向上が実現されます。
高度なテクノロジーを活用したコンテンツ・エンジニアリングがもたらすメリットは、言うまでもなく、媒体制作業務の大幅な効率化・コスト削減と一貫したコミュニケーションの実現です。ルールによって明確に定義されたシステムは、素材の検索からコンテンツの作成、承認プロセスを改善し、あらゆるチャネルにおける一貫性と追跡性の確保が可能になります。
- 明確に構造化された協業プロセス
コンテンツエンジンが提供する役割モデルによって、社内外の各部門、拠点に散らばったコンテンツ制作・配信に関わるチームのコラボレーションがしやすくなります。 特定のコンテンツやアクションごとの明確な役割や権限の割り当てができ、運用に合わせてワークフローをデザインします。自動化されたコンテンツの提案や提供、個々のユーザの役割に基づいたアクセス制御は、チームの作業負担を軽減し、場所や部門にとらわれず、チームメンバーのスキルを継続的に活用する環境を提供します。
一元管理された媒体制作プロセスによって享受するメリットは、それだけではありません。タスク管理を明確にマッピングします。制作やリリース、印刷プロセスに関するアドホックメッセージによって、個々のチームメンバーのタスクやプロジェクトのステータスを常に把握することができます。
さらに、コンテンツエンジンのコラボレーション構造が、外部制作プロダクションやPRエージェンシー、フリーランサーとのセキュアな連携もサポートします。
- アセットの再利用
ユーザの役割に基づいたアクセス制御モデルが提供するのは、コンプライアンス対応を考慮した効率的な媒体制作プロセスに必要なフレームワークだけではありません。 既存コンテンツの再利用を向上させるための簡単な操作と直感的な検索機能も提供します。多様なツールを使うことで、適切なアセット使用が可能になります。洗練されたコンテンツエンジンのユーザ指向の操作により、例えば、類似またはテーマに適したテキストモジュールを表示するなど、既存コンテンツの再利用を促します。
複数のメディアや地域、ターゲットグループ、表現形式で再利用できる基本情報は、1度のみ取得すれば足ります。そして、タグ付きコンテンツモジュールに変換され、自動的に"must"または "can"カテゴリーに配置されます。この機能が検索を容易にするほか、あらゆるタイムゾーンや部門の関係者が、それぞれのターゲットグループと配信チャネル、デバイスに合わせたコンテンツを着実に配信することをサポートします。
- 標準化による一貫性の担保
業務の標準化には、プロセスとコンテンツ制作の両面において多くの利点があります。例えば、マーケティングと技術的な基準、またはセールスの観点からすると、分類基準とスタイルシートと並んで、構造化されたコンテンツは、社内外のユーザ、拠点、チャネル、デバイスをまたがるコミュニケーションに不可欠な基盤となる情報モジュールになります。それにより、企業理念やアイデンティティに関する基準に沿って、各拠点で一貫したフォーマットやデザイン、メッセージの発信ができるようになります。テンプレートや優先順位を付けたコンテンツモジュールに直接アクセスすることで、プロセスにかかる時間を大幅に短縮し、より迅速の業務プロセスが実現されます。
- 履歴管理とトレーサビリティ
シームレスなバージョン管理が媒体制作のスムーズなコラボレーションだけでなく、コンプライアンス対応においても重要な役割を果たします。 機密情報や締め切りを厳密に守る必要な公開・印刷プロセスの場合、個々のデータ処理、公開手順における履歴管理が特に重要です。 一元的なコンテンツエンジンを活用すれば、各拠点や部門を横断して、誰がどのコンテンツをメンテナンスし、いつ公開したかといった履歴を把握することができます。
- ライフサイクル管理によるインテリジェンスの向上
一元的なコンテンツエンジンのライフサイクル管理により、メンテナンス基準やコンテンツ制作プロセスの品質が常に動的なマーケティング戦略の基準を満たしていることが保証されます。あらゆるチャネル、地域、ターゲットグループを横断して、コンテンツのROI指標による効果分析を実施することで、コミュニケーション施策やキャンペーンのパフォーマンスと成果に対する価値あるインサイトが得られます。したがって、コンテンツ・インフラストラクチャーが、 最適化の回路における learning system(自動学習システム) になると言えます。
- 既存システムとの統合
CRM, CMS, PIM または ERP などの既存ソリューションと統合することで、既存のシステム投資が保護されます。 コンテンツエンジンは、分散したシステムを一元的なプラットフォームに集約し、コンテンツに関わる全てのデータソースを統合します。既存システムの拡張に加えて、この原則によって、組織全体の「コンテンツ・インテリジェンス(コンテンツにかかるアセット管理)」の統合管理と再利用を実現します。
コンテンツエンジンがもたらす利点
- 包括的なアセット管理
- コンテンツ・インテリジェンスのフル活用
- あらゆる接点におけるコンテンツのシームレスな統合
- 洗練された役割モデルによる明確な役割/権限に基づいたアクセス制御
- あらゆる拠点を横断した媒体制作プロセスの効率化・自動化
- 標準化によるコンテンツ制作ワークフローの最適化
- 変更履歴管理とコンプライアンス対応
- ライフサイクル管理による学習システム
- 既存システムとの統合による既存投資の保護
社内に散在するコンテンツのリソース、その莫大な可能性を最大限に活用せよ!
様々な地域、言語、チャネル、メディアで展開されるコンテンツを効率よく管理する上で、カギとなるのがコンテンツ・エンジニアリング。将来を見据えた戦略と、その実行に必要なテクノロジー・ソリューションによって、プロセスの履歴管理が可能で、動的な媒体制作ワークフローの基盤を作り、コンテンツ・インテリジェンスを適切に活用することが可能になります。
コンテンツ・エンジニアリングは、様々なチャネルにまたがる複雑なコンテンツを管理するためだけのものではありません。企業が取り組むマーケティング活動、顧客エクスペリエンスの未来を切り開く基盤となる仕組みです。
※本記事の内容は、Contentservが制作した「Consistency in All Dimensions ~ Content Engineering for the Marketing of the Future 」英語版ホワイトペーパーの訳です。