SKUはどう作成するのが最適か?
どのような技術をロールアウトする場合でも、大きな決断を下す瞬間が訪れます。PIM(商品情報管理)ソリューション導入の場合、それは大抵、商品情報を一元的に照合、管理し、充実させることのビジネス的意義が証明されたときです。
PIMシステムがいかにデジタル販売を促進するかについてをブログでご紹介したように、このビジネス的意義は、ブランドや小売業者が直面する次のような場面で、 PIMがどう支援するかにかかっています。
- プロセスの簡素化とタスクの合理化
- データ品質の向上
- 商品に関する”信頼できる唯一の情報源”の作成
- マルチチャネルでの迅速な市場投入
- よりパーソナライズされたショッピング体験の構築
これらは投資を決める際の強い動機になりますが、一旦PIMの導入が決まると、導入にまつわる新たな疑問点が浮かび上がってきます。詳細かつ複雑な疑問が多いですが、大きく分けると次の2つの質問が中心となっています。
- PIMは既存の技術スタック、例えば自社のERPシステムなどとどのように連携するのか?
- PIMを導入すると、日常的なデータの取り扱いにどのような影響があるのか?
こうした質問に答える一つの方法が、SKUの作成に着目することです。
SKUは既存のERPシステム内で作成するべきか、それともPIM内で作成するべきか?
これは、多くの小売業者やブランドがPIMを購入する際に、早い段階から疑問に思うことです。その理由はよく理解できます。SKUの追跡ができなくなると、店舗や倉庫の補充という単純な作業があっという間に手に負えなくなるからです。PIMを導入していない企業は、通常ERP内でSKUを作成しているため、プロセスを変更する必要があるなら早期に把握したいと考えるのは当然のことです。
ここでまず認識すべきことは、PIMは基本的に柔軟なシステムであり、ERPと「会話」できるので、急いで変更する必要はないということです。しかしながら、これはタスク指向の問題の見方です。別の視点から、もっと有意義なアプローチをしましょう。「ERPとPIMにはどのような種類のデータが存在するのでしょうか?」
一般的に、ERPが商品やサービスの商品番号、価格、在庫数や出荷時期に関するデータを「担当」することは理にかなっています。うまくいっているのなら、変更する必要はありません。SKUをどこで作成するかという問題は、実際には二の次で、既存のERP内でSKUを作成するのが簡単な企業にとってはこれは朗報です。
しかし、ERP内でSKUを作成することが容易でない場合はどうでしょう。
この場合は、PIMの柔軟性が役に立ちます。例えば、小売業が複数の会社から商品データを受け取っている場合を考えてみましょう。データは、Excel、CSV、XMLなど、様々なフォーマットで届くことが想定されます。しかし、ERPシステムは従来、構造化された業務データを扱うために設計されたものであり、多様なソースからのデータを取り込むよう設計されたものではありません。そのため、この種の作業にはあまり適していません。
こうした場合には、最初にPIMに情報を取り込む方が理にかなっています。特に、サプライヤーが全製品のデータを提供していて、小売業者が仕入れる予定のない製品も含まれている場合はなおさらです。この場合、ERPを不要なデータでいっぱいにするのではなく、関連する製品を選択してPIM内でSKUを作成する方がよいでしょう。このSKUはERPにプッシュされ、例えば商品番号や価格設定を行うことができます。この例では、2つのシステム間で情報のやり取りが行われます。
サプライヤーやメーカーに目を向けると、彼らがデザインした製品がすべて市場に出るとは限りません。あるファッション関係企業を例に考えてみます。その企業が新しいTシャツのシリーズを開発したとします。見本市に出展してみて、市場でよい結果を出せそうなのはそのうちの半分のデザインだけだと判断される場合もあります。
市場に提供されることのない製品のSKUをERP内に作成するよりも、最初はPIMで作業し、製品の発売・販売が近づいてからERPにエクスポートする方が合理的です。
どちらのケースも、最終的な判断は、何が最適なワークフローかによります。重要なのは、PIMをERPシステムと併用することで、小売業者やブランドは最も効率的にデータを処理する方法を柔軟に選択できるようになるということです。
PIMで価格設定を管理できるのか?
PIMがいかに柔軟なものであるかを説明するために、価格に着目してみましょう。すでに述べたように、ほとんどの企業はERP内に価格データを保持するでしょう。その後、読み取り専用でPIMにエクスポートすることができます。しかし、PIM内で行う方が簡単な場合もあります。
昨年、ドイツ政府はVAT(付加価値税)を19%から16%に引き下げました。多くの企業にとって、これは予想外に対応が困難な作業となりました。ERP内の個々のSKUの価格を変更する必要があったからです。そのため、支払い時に3%を差し引くという方法をとる企業もありました。
多くの場合、このようなシナリオはPIM内で管理する方が簡単で、3%の控除を簡単に自動化することができます。このアプローチは、割引や、重さまたは量で販売される品目にも適用できます。 ERPは単位当たりの最終的な販売価格を管理していますが、キログラムやリットル当たりの基本価格という、製品のマーケティングを考える際に重要な情報を計算する術がありません。
柔軟なコミュニケーション
上記のようなSKUの作成方法はどれも実行可能であり、自由に組み合わせてハイブリッドなアプローチも可能です。最終的には、PIMを既存のIT環境にどのように統合し、どのような要件を満たしたいのかによって、選択することになるのです。しかし、ここで述べてきたことの根底にあるのは、あるひとつのアドバイスです。それは、データを一方向に移動するだけでなく、システム間で双方向に移動でき、そしてまた別のシステムからデータを統合できる必要があるということです。
シンプルに聞こえるかもしれませんが、効率的なワークフローを構築するためには、この考え方が重要です。例えば、オンラインショップやマーケットプレイスとの連携を考えてみてください。こうしたシンジケーションのプロセスをPIMに任せ、可能な限り自動化することは理にかなっていると言えるでしょう。
顧客ごとに異なる価格を表示する必要がある場合はどうしたらよいでしょうか。異なる商品データをそれぞれのチャネルに提供する必要がある場合は?一つのアプローチは、PIMがサードパーティーソフトウェアとの通信を担当してシンジケーションを処理し、ERPに価格情報を提供するコマンドをトリガーし、これら二つの異なるデータストリームを統合することです。
繰り返しとなりますが、PIMを既存の技術スタックに統合するたったひとつの「正解」の方法というのはありません。同様に、データやSKUの作成などのプロセスを処理するための「正しい」方法も1つではありません。PIMの良い点はその柔軟性にあり、このブログでご紹介したすべてのビジネスシナリオにおいて、既存のシステムを補強し、ワークフローを改善することができます。まだご紹介できていないものもたくさんあります。