ROTHENBERGER社は、これまでもPIMシステムを使って商品データをメンテナンスしていました。グループ内の主要なSAP ERPシステムから、インターフェイスを介して可能な範囲でPIMシステムへデータ転送を行い、その後、各部門や国内子会社のプロダクトマネージャーが、データのエンリッチメントやマーケティング情報を担当していました。
情報が足りないと、追加の調査や社内調整が必要になるなど、作業量が増えて市場投入に余計な時間がかかることがよくありました。
製品分類も複雑で、工具業界で確立されているものと、新しく追加され続ける分類の両方をシステムにマッピングする必要がありましたが、既存のPIMシステムでは対応しきれなくなっていました。そのため、大規模なカスタマイズ、あるいはプロセスに統合されていない代替システムやドキュメントを通じてこの特定情報を生成していました。
取引先から製品情報のリクエストがきた場合は、まず異なるシステム間のデータをまとめるところから行っていましたが、詳細なデータは後で提出されることも多く、結果的にエラーが発生しやすくなっていました。取引先へのデータエクスポートを個別に作成しなければならないことも、プロセスが複雑化し、多くの時間がかかる原因となっていました。
このように、会社が成長するにつれ、既存のPIMシステムと当時の手順は、徐々に限界に近づいていました。ますますデータ主導型になるグローバル市場でポジショニングを維持し、さらなる競争優位性を獲得するためには、標準化されたビジネスプロセス、持続可能なデータインベントリ、信頼できる単一の情報源を実現するデジタル化戦略が必要だと強く感じていたのです。
要件
ROTHENBERGERと導入支援を担当したParsionate社チームに課せられた目標はかなり厳しいものでした。
- 日常業務における総合的なメンテナンス・プロセスをサポートするシステムによって、時間とコストの両面で社内のメンテナンスにかかる労力を削減する
- 取引先や販売チャネル向けに、信頼性が高く完全な商品情報を提供する
- プロセス制御によるデータメンテナンスと、システムがサポートする定期的なチェックによって、データ品質を向上させる
- 新しい分類や属性へ迅速に対応する
- よりスムーズな国際標準とデータ保護に対応する
- 商品の市場投入までの時間を短縮する
実装
効率的で顧客志向のシステム・ソリューションへの道のりの第一歩は、既存のシステム環境とビジネスプロセスの包括的な棚卸しを行うことでした。 同社は、Contentservパートナーのコンサルティング企業であるParsionate社とともにワークショップを複数回行い、さまざまな部門にある既存の製品情報、ワークフロー、プロセスを調査し、評価しました。これにより、データ品質の客観的評価に加えインフラに関する情報も得られ、既存のPIMシステムではもはや企業固有の要件をカバーしきれないという重要な発見もありました。すでに非効率なデータフローを長期的に最適化していく方法はなく、新しいテクノロジーに投資する時期が来ていることが証明されたのです。これを受けて、 ROTHENBERGER社は、既存システムを将来の市場と顧客の要求に対応した最新のものに置き換える決断をしました。
その後、最適なシステムを選択する過程においてもParsionate のコンサルティングチームがサポートし、ソフトウェアベンダーとのやりとりや入札プロセス全体を担当しました。ベンダーの比較指標を作るユースケースとして、PIMヘルスチェックで事前に決定された所見と目標とする要件が提示されました。ベンダーのロングリストから3社のソフトウェアベンダーに絞られ、ビデオ通話でソリューション説明が行われました。 ROTHENBERGER社は、Contentservのシステムプロバイダーとしての、設定ユースケースへの対応、オープンクエスションに対する要件に合ったソリューションアプローチ、ユーザーフレンドリーなインターフェースなどを高く評価しました。
以前のメンテナンス・プロセスに比べ、現在の商品データのメンテナンスは60~70%ほど速くなりました。
同社は、要件分析の早い段階で新しいPIMシステムをクラウドベースで実装することを決定し、内部支出の削減や拡張の容易さによる将来の実行可能性の確保といったメリットから長期的に利益を得られるようにしました。第一段階として、ROTHENBERGERブランドが、同グループ(傘下に8つの強力なブランドを擁する)のブランドとして初めて、ContentservのProduct Experience Cloudで稼働を開始しました。
導入効果
ROTHENBERGERは、Contentserv PIMソリューションをすべての商品情報とデジタルアセットの一元ソースとして活用することで、処理時間とコスト削減という目標に沿って、データメンテナンスにかかる労力を大幅に削減しました。
新たに、自動化された継承構造とデータモデルに特化したクラスモデルに的を絞って使用することで、将来的なデータメンテナンスにおけるエラー率を抑え、商品情報のデータ品質をさらに向上させています。
導入プロジェクトでは、各部門のこれまでの手順が試され、ワークフローで、システムがサポートする形でチーム内のコラボレーションを定義しなおしました。メンテナンス・プロセスを全社で統一的に理解することで、商品データをより効率的に、高い品質を保って生成できるようになっています。例えば、各国の子会社からの翻訳は、システム内で直接翻訳され、リリースされるようになりました。こうすることで、関連国のネイティブ・スピーカーが責任を負い、コンテンツは常にPIMシステム内にとどまるようになっています。
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4,000以上の商品と約50GBのアセットが旧システムから移行され、商品のメンテナンスプロセスが見直されました。
他にも、BMEcat、GS1、DATANORMなどの一般的な分類標準に従って電子カタログを自動的に作成するソフトウェアであるSemaino Technologies社のecatDesignerとPIMを接続したことで、現在または将来有効なあらゆる分類形式で商品データを取得できるようになりました。
このように、Contentservのシンジケーション機能によって、さまざまなチャネルや専門小売店へのデータ提供を、受け身ではなくプロアクティブに行えるようになりました。以前はオンデマンドでデータを検索していましたが、すべての商品データとアセットをバンドルし、1回のエクスポートでプロアクティブに提供できるようになったのです。
取引パートナーへのエクスポートは、すべて希望する技術ベースの分類形式で行えます。
- データシート(スマートドキュメント)の自動生成もワークフローのステータスに応じて行われ、高品質なレイアウトで商品情報を受け渡すことができます。
- カタログの半自動印刷出力もすでに実装されており、InDesignでレイアウトチームに提供されています。
- eコマースチャネルへの商品情報のエクスポートもStoryblokと接続して実装されており、すでに27の言語で完了しています。
PIMシステムは4ヶ月という記録的な短期間で導入されました
ROTHENBERGER社は、自社が作業タスクの大部分を担う伴走型実装モデルを使用することで、プロジェクト開始時からクラウドベースのシステムで生産的に作業を行い、プロジェクトに直接関与することができました。また、「トレーナーを育成する」というコンセプトのもと、同社のチームはプロジェクトの非常に早い段階からシステムを安全に操作できるようになりました。これにより、独自に従業員の研修を行い、プロジェクトへの参加をスムーズに進めることができています。
このシステムはメディアニュートラルに設計されており、各部署から高い評価を得て、将来的な市場要件にも十分に対応する準備ができています。まもなく、ROTHENBERGERブランドに続いて、同グループの他のブランドや国内企業でもContentserv PIMシステムの利用が始まる予定です。