小売業界を中心に先進的な取り組みとして注目されてきたD2Cですが、新興企業だけでなく大企業でも取り組みが広がっており、多様な新しいブランドが生まれて、引き続き盛り上がりをみせています。
多くのお客様から支持されるブランドが生まれている一方で、業績が伸び悩み、頭を抱えるブランドも少なくありません。D2Cブランドとしての成否を分けるポイントはいったいどこにあるのでしょうか。
まずD2Cの定義について考えてみましょう。主な共通点として次のような要素が挙げられます。
D2Cを広義に捉えると、中間業者に依存せず直接消費者と繋がり、コミュニケーションを通して商品を製造・販売するモデルです。そこからさらに、独自の「世界観」を構築し、提供するライフスタイルを表現することでファンを獲得しているブランドというのが狭義の意味でのD2Cと言えるのではないでしょうか。つまり、自分達の提供するライフスタイル・世界観を顧客コミュニティに直接提供し、 継続的な関係を築いていくことを目指しています。加えて、デジタルを駆使して一気に市場を拡大していくことを狙ったビジネスモデルです。
これまで大手消費者ブランドは、広告代理店を通してメッセージを発信し、マス広告でお客様の認知を獲得した上で、小売店の売場を確保し、小売店を介して商品を流通させていました。非常に効率的で確立されたやり方ではあるものの、ダイレクトに顧客の情報を得られないだけでなく、ブランドの世界観をどれだけ丁寧に作り込んでも、いつどのようにお客様に伝えられるかは自分達のコントロール外になってしまいます。そのため、思いもよらぬ形でブランドの世界観を毀損されてしまったり、販売チャネルが間に入ることでユーザーの体験自体も毀損されてしまうといったリスクを孕んでいました。
そして、なにより顧客とのコミュニケーションを構築していくノウハウやデジタルコンテンツが自社に蓄積されないという課題がありました。
自社で企画から運営まで一貫して行なっている場合でも、製造業を中心に機能的価値の訴求が重視されてきた結果、ライフスタイルや世界観といった情緒的価値を訴求するために必要となるノウハウやデジタルコンテンツを社内に蓄積できていないという声もよく聞きます。
D2Cブランドとしての成功を左右する重要なポイントは、「お客様に提供する機能的価値である「モノ(商品)」に対して、いかに情緒的価値である「コト(文脈)」を結びつけて提供することができるか」です。
しかしながら、自社の世界観を訴求するためのノウハウもコンテンツも十分に整備されていない企業が多く、そのことが事業としての成否に影響しているのです。
では、世界観を作り訴求すれば売れるかというと、それだけでは十分ではありません。なぜなら、お客様が検討している商品やブランドの属するカテゴリーに詳しいかどうかによって、商品やブランドの認知のされ方が異なるからです。詳しいお客様は商品の具体的な仕様やスペックから検討に入りますが、あまり詳しくない方や関心の薄い方は抽象的・情緒的な情報による認知から入ります。
そのため、消費者に自社の商品を選んでもらうためには、顧客のペルソナや商品の理解度、検討プロセスなどに応じて、適切な情報を提供していくことが求められます。しかし、ライフサイクル全体を通してコミュニケーションが設計されていない、もしくはコンテンツが整備されていないために、チャネル単位で最適化され、全体として一貫性のない情報が提供されてしまい、結果として顧客の購買体験を毀損しているケースが少なくありません。
FABRIC TOKYOやMEDULLAなどの新興ブランドだけでなく、コクヨやP&Gように従来型のビジネスを展開している企業においても、D2Cの成功例が生まれてきています。それらの企業では商品そのものの提供する価値とブランドの世界観をうまく掛け合わせた訴求が行われており、デジタルだけでなく実際の店舗でも商品の世界観に直に触れてもらうような仕掛けがされるなど、あらゆる顧客接点で一貫性のある魅力的な購買体験が提供されています。
このように、デジタル・アナログを問わずにあらゆる顧客接点において一貫性のある商品情報を提供していくことは、D2Cブランドにおいて非常に重要なポイントです。
一貫性のある商品情報の提供を実現するためには、あらかじめ組織横断でコミュニケーション戦略の合意形成をはかることが不可欠であり、その戦略を実行するために必要なコンテンツのバリエーションを整備することが必要なのです。
しかし、コンテンツが社内に散在し、どのようなマーケティングリソースがあり、どのように利用されているかが可視化されていなければ、適切なバリエーションを揃え、コンテンツをメンテナンスしていくことはできません。
そのための器となり、商品情報を一元管理し、共有していく役割を果たすのが、PIM(商品情報管理)ソリューションです。これにより、最新で正確な商品情報にいつでもアクセスでき、可視化された状態を作ることができます。これが顧客に自社の世界観を訴求していくための第一歩となるのです。
コンテンツを可視化することで活用すべきコンテンツが明確になり、不足しているコンテンツを拡充することができます。コンテンツのバリエーションを充実させることで、消費者が見たい時に、見たいチャネルで、見たい情報を提供することが可能になり、ライフサイクル全体にわたって良質で一貫性のあるコンテンツを提供していくことができるのです。PIMを基盤とし、消費者とブランドの良好な関係を築くためのコミュニケーションを実現していきましょう。