ROX: なぜ顧客満足が成功をもたらすのか?
ROX(Return on Experience:体験から得られるリターン)は、比較的新しい重要業績評価指標(KPI)です。 ROXとは、あらゆるタッチポイントにおける顧客と企業間の体験の質を意味し、なぜカスタマー・エクスペリエンス(CX)に投資する価値があるのか、その理由を示唆してくれます。これを怠ると、収益の損失や評判の失墜につながる可能性さえあるのです。
新たな成功指標 ROX
投資収益率(ROI)という言葉には馴染みがあるという方も多いと思います。これは、ある投資がどの程度うまくいったかを判断するものです。ROXも同様に、カスタマー・エクスペリエンス(CX)に対する投資から得られる価値を評価するために使用されます。
しかし、ROXは単一の指標で構成されているわけではなく、顧客を満足させ、ロイヤルティを確保することを目的とした取り組みを理解するための包括的なアプローチです。こうした取り組みには、主に次のようなものがあります。
- お客様のコストを削減する(例:注文や返品のコスト削減)
- お客様の時間を節約する(例:プロセスの高速化や手作業の軽減を通じて)
- 利便性の向上(例:ユーザーフレンドリーなツールやウェブサイトを通じて)
- 付加価値の創出(例:割引、プレゼント、限定情報などを通じて)
あらゆるタッチポイントで、ポジティブで価値ある、差別化されたCXを提供することは、あらゆるビジネスにとって極めて重要です。その結果、エクスペリエンスに対するリターンが増加します。
カスタマーエクスペリエンスを極める
しかし、ROXを掘り下げる前に、まずはお客様について知る必要があります。
顧客体験を向上させるためには、顧客が何を期待し、何に悩み、何に感動しているかを理解しなくてはなりません。
例えば、オンラインショップの利用者の約3分の1は、注文のためにアカウントを作成することや、商品情報、配送料、納期が不完全または不正確であることを嫌がっています。
5分の1のお客様は、こうした理由から購入額が減ったり、二度とその会社から購入しなくなったり、購入プロセスの途中で断念してしまっています。
お客様を理解することは、お客様のニーズを先取りし、お客様の期待を上回る結果を出すための重要なポイントです。
ポジティブな顧客体験の仕組み
お客様に満足していただき、長く付き合っていただく。
これは、どんな企業にとっても理想形です。しかし、それを実現するためには、企業は顧客の期待と実際の顧客体験のギャップを埋めていく必要があります。顧客は、購入から配送までシームレスな購買行動を期待し、商品情報に簡単にアクセスできることを望んでいます。
例えば、誰かがクロストレーナーを注文した場合、機器の機能、梱包・発送方法、到着までの所要時間などを知りたいと思うはずです。こうした期待に応えることができれば、そのお客様は同じ小売店やメーカーから他のスポーツ用品をまた購入する可能性が高くなります。
ROXの算出方法
ROXは、特定の顧客体験を生み出すために使用した資本で、生み出された利益を割ることで算出できます。
ROX = CX施策から創出される利益 / CX 投資
利益は、売上高から顧客満足度を高めるためのCXの取り組みにかかった費用を差し引いて算出します。
ROX= CX施策から得られるリターン - CX 投資 / CX 投資
例えば、クロストレーナー(上記の例)の納期が、ポジティブな顧客体験の基準となる場合、希望日に納品した場合の売上とコストから、ROXを算出できます。
ROX=純収益 - 希望日の納品にかかる費用 / 希望日の納品にかかる費用
ROXは、CXの取り組み(この場合は納期優先)が報われるように、0より大きいことが理想です。 ROXが0の場合は、CXの取り組みによって顧客満足度は向上したが、すぐに収益を上げることはできなかったということになります。この段階で、ユーザーが納期を選べるようにする前と後の売上を比較することができます。
ROXにおいて、商品情報が担う役割
CXの取り組みでは、技術的なデータやコンテンツを扱うことがよくあります。特にeコマースではそうです。お客様が実際に商品を試してみることができる従来の小売店とは異なり、eコマースにはそのような選択肢はありません。そのため、提供する商品情報は、お客様の体験やROXに大きな影響を与えうるのです。そこで、商品情報管理(PIM)システムが役に立ちます。
PIMシステムは、次のような理由からROXの向上に貢献します。
- より良い商品データは、顧客にとってより透明性が高く、返品率を下げ、コスト削減につながる
- より良い商品データにより、カゴ落ちが減少します。その結果、企業は失うはずだった売上を確保するだけでなく、ビジネスを拡大することができる
- 完全で正確、かつパーソナライズされた商品情報を提供することで、顧客体験にプラスの影響を与え、より多くの売上を確保することができる
- 製品仕様、販売店やメーカーの情報、在庫状況、保証、配送、カスタマーレビューなど、顧客の購買決定を後押しする情報を保存、整理、管理することができる
- 商品レビューを保存、整理、管理し、顧客体験を向上させ、購入決定を加速させることができる
ROX - 商品情報が与える影響
返品は、商品の回収、整理、再梱包や片付けなど、企業にとって新たなコストを生み出します。もし、購入商品について正確で完全な情報を提供できていれば、こうしたコストは回避できるはずです。
以下の例は、優れたROXを達成するために、商品情報が果たす役割を示しています。
まとめ: PIMを活用してROXの改善へ
B2B、B2Cのいずれの顧客を対象としている場合でも、優れたデジタルカスタマーエクスペリエンスを提供することは、顧客の成功、維持、ビジネスの成長の鍵となります。ビジネスの成功を数値化するには、 ROXは不十分な指標に思えるかもしれません。
しかし、顧客満足に投資することの利点を考えれば、すぐにCXとリテンションは相性が良いということに気づいていただけるはずです。結局のところ、満足した顧客は定着し、積極的な交流はロイヤルティを育みます。しかし、ロイヤルティを金銭で定量化することはほとんど不可能です 。