簡単に説明すると、ローカリゼーションとは、特定の地域や市場に合わせてコンテンツをカスタマイズするプロセスであり、翻訳はそこに欠かせない要素の一つです1。この2つは言語と文化上の利用しやすさにおいて二人三脚の関係であり、特にeコマースの場合、市場の拡大や成長に絶対に必要です。
business.comによると2 、世界中で新しい市場が毎年生まれています。eコマース上位10市場は、次のとおりです。中国:6,720億ドル 、米国:3,400億ドル 、英国:990億ドル 、日本:790億ドル 、ドイツ:730億ドル 、フランス:430億ドル 、韓国:370億ドル 、カナダ:300億ドル 、ロシア:200億ドル 、ブラジル:190億ドル
これらの市場に投資すれば高い利益を上げられるかもしれません。しかし、ほかのグローバル市場も同時に急成長しており、eコマース市場で重要な位置を占めるようになるだろうということを、企業は認識する必要があります。事実、eコマース市場の売上のうち、米国の世界で占めるシェアは2015年の20.2%から2020年には16.9%へと減少しつつあります3。
読めなければ消費者は購入が不可能
実際、理解できないコンテンツに関心をもつ人はいません。消費者は、自分たちを対象としていないことが明らかなコミュニケーションに時間を浪費しません。だから、翻訳は重要なのです。
翻訳とは?
ある言語から別の言語に内容を言い換える、あるいは変換するのが、翻訳です。その重要性と意義は、欧州、アジア、南米の非英語圏10か国におけるCSA(顧客サービス担当者)調査で浮き彫りになりました。
この調査で、75%の購買者が母国語での買い物を好むことが明らかになったのです。そのうえ、60%が英語のみのウェブサイトからはめったに、あるいは一度も購入していません4。しかも、世界中75億人の人口のうち、英語話者はわずか20%ほどです5。
この顕著な数字が企業に促しているのは、市場で使われている言語でコンテンツや商品情報を入手できるようにすることです。そうしないと手痛い影響が及びます。
HSBC銀行が大失敗した翻訳を例にとってみましょう。現在、HSBC銀行は「世界のプライベートバンク」というキャッチフレーズで知られています。世界第6位の銀行にふさわしい表現です。ただし、いつもこのような表現ができたわけではありませんでした。
2009年、同行は数百万ドルを投じて「Assume nothing(先入観をもつな)」キャンペーンを行いました。しかし、この「Assume nothing」が多くの国で「Do nothing(何もするな)」と翻訳されたため、結局、ブランドを見直すためにさらに1,000万ドルと数年間を費やすことになってしまいました6。
ローカリゼーションで必要なものとは?
言葉を翻訳するときは、文化も正しく伝えなければなりません。妥当性、関連性、信頼性に関してはなおさらです。ローカリゼーションプロセスのその他の要素の例としては、以下があります。
- 商品の取り揃え。購買層が違えば、嗜好やニーズも異なります。たとえば、ファッション小売業者は、温暖地域の店舗でコットンシャツとカーキパンツを扱う一方、寒冷地域の店舗ではフリースジャケットを販売することがあります。
- 通貨。世界展開しているショップでは、金額の換算をシームレスに行わなければなりません。すべての消費者や購買者が金額をその場で換算できるわけではないからです。PayMotionによると、価格が外貨の場合、13%の購買者がカートを放棄します。
- 決済方法。国ごとに望ましい決済方法があります。たとえばロシアでは「QIWI」という一種の電子ウォレットが好まれていますが、南アフリカの消費者はVisa、Mastercard、AMEXといった大手カードブランドを利用しています9。
- 商品の画像。画像/写真は、現地の人々のことをよく考えて訴えかけるものでなくてはなりません。文化ごとに、意義や不快性に関してある種の特性があります。違いを理解することがビジネスの成否を分けるわけです。
Coca-Colaが2013年に行った「Share a Coke」キャンペーンは、ローカリゼーションがうまくいった一つの例です。このキャンペーンはまずオーストラリアで開始され、同社は、ボトルのラベルのロゴを「Share a Coke with (Name)((人名)とコーラをシェアしよう)」に換えました。これが大成功を収めたので、世界で展開されました。
ただ、ボトルに名前が書いてある人のためにコーラを購入するというのは、パーソナライゼーションとして非常に秀逸ですが、中国など、人をファーストネームで呼ぶことは無礼な国ではこのキャンペーンは適切ではありませんでした。そのため、同社は、人の名字と敬称をラベルに印刷する代わりに「親友」や「クラスメート」といった丁寧な一般名称を使いました10。
ローカリゼーションの主な課題
ローカリゼーションには費用も時間もかかることがあります。ローカリゼーションの費用は、一般的に、言語、ファイル形式、グラフィックやその他多くの要素によって変わります。例を挙げると、翻訳の平均料金は企業レベルで1語当たり約0.20ドルから最低レベルで1語当たり0.08ドルです11。
ローカリゼーションは、通常、社内での作業かエージェントを通した作業です。人間が専門で翻訳にあたることもあれば、機械翻訳(MT)を使って行われることもあります。人間が翻訳すると、翻訳対象のコンテンツが大量な場合に対応に困難な場合があります。
また、機械翻訳では結果が100%正確でない場合があります。理想的な解決策は、両者を組み合わせて、機械が量に対処し、人間が言語の性格さを確保することです。
どこから着手すべきか
ローカリゼーションの適切性を確保するためには、組織がローカリゼーションを自社プロセスに組み込むことが重要です。しかしこれは、場合によっては思ったほど簡単ではありません。組織は、ローカリゼーションを自社で行う費用や外部エージェントに外注する費用を考慮に入れなければなりません。
さらに、ローカリゼーション支援ツールの検討も重要になります。たとえば、翻訳などのプロセスを自動化したり、商品情報管理(PIM)システムのようなより包括的なソリューションを用意したりすることによって、翻訳プロセスや国際化プロセスを合理化することができます。