市場が断片化し、消費者は自分に関係のない情報を受け入れてもらえない時代、企業は「マイクロターゲティングされたコミュニケーション」に取り組むことが求められています。その推進力となっているのがコンテンツ・マーケティングです。マルチチャネルにおけるコミュニケーション戦略を進める企業は、自社のシステムに対する考え方を根本から変えなければいけないことに気付き始めています。
このシリーズで(全2部シリーズ)では、媒体制作で企業が抱えている課題、エンタープライズ・マーケティング・マネジメントの再考に役立つコンテンツエンジンについて解説します。
Velocity Partners 社 共同創業者 Doug Kessler
" マーケティングは、伝説を作って売り込むことから、真実を共有することに変わっている “
Salesforce カスタマートランスフォメーション&イノベーション戦略担当シニアバイスプレジデント Marc Mathieu (元サムスン電子アメリカCMO/ユニリーバー社マーケティングディレクター)
" 従来の売り込み型マーケティング手法に対して、 コンテンツ・マーケティングは有益な情報を通じて企業が顧客と対話する手法である "
デジタル時代の今、あらゆる顧客接点を通じて顧客に届ける一貫したコンテンツの重要性が増す一方です。このため、コンテクスト・マーケティングと同時に、インテリジェントなコンテンツ管理ソリューションの需要が高まっています。異なる地域や言語、チャネル、ターゲットグループ、デバイスの種類など、企業が顧客とコミュニケーションを取る顧客接点に応じて、コンテンツの最適化が欠かせません。
リサーチ&コンサルティング社Namicsが行ったContent Marketing 調査によると、多くの企業は、コンテンツの制作・管理、マーケティング施策を集約した、1つの独立したメディアを展開したいと考えています。 企業の顧客コミュニケーションとは、単なるサービスの紹介に止まるものではありません。
自社の製品やサービスに関する質の高い、そして顧客に価値あるコンテンツを提供し続けることで顧客を納得させるプロセスです。 そこで、企業のコンテンツ制作・管理における課題が浮き彫りになっており、将来を見据えたパラダイムのシフトが求められています。
急速なデジタル化に伴い、 今日のマーケティングコミュニケーション部門は、1つのコンテンツにつき、100を超える異なるバージョンの制作・管理を強いられています。配信先の1つのチャネルで共通なメッセージが変更された場合、個々の情報モジュールのバージョン管理からコンテンツ・ポートフォリオのライフサイクル管理まで、媒体制作業務全体のキャパシティや効率性が試されることになります。
実際に、従来のコンテンツ管理環境では、複雑化が進むコンテンツの管理が限界に達しているのが現状です。媒体制作の協業プロセスを可能にし、 増え続けるデバイスやチャネルにとらわれないインテリジェントなコンテンツ・エンジニアリングの重要性はもはや無視できないものになっています。
1つだけ確かに言えることは、広範なシステム・イノベーションがあって初めて、コンテクストマーケティングと顧客コミュニケーション戦略の可能性を最大限に活かすことができます。
Coca Colaが取り入れたコンテンツ戦略の例
デジタル化時代に求められるコンテンツ戦略のあり方について、Coca-Cola 社の事例から学びたい。同社のコミュニケーション担当を務めるPatrick Kammerer は、典型的なコーポレートWebサイトが「もはや時代遅れ」としており、ブランドに関連するコンテンツの重要性を強調している。
2013年以来、同社は、メディア・デバイスに依存しないブランドエクスペリエンスを提供することを目的に、独自のオンライン雑誌 「Journey」を運営。現在、Coca-Cola 社の顧客コミュニケーションを担うデジタルセンターは、世界16ヵ国に設置されている。
コンテンツの制作と配信を分散したシステムで運営していては、急速に変化する市場のニーズに対応できません。様々な地域、言語、チャネル、システムにまたがるコンテンツの統合管理、データとワークフローの一貫性、コンプライアンスの対応。これらは、コンテクストマーケティングを成功させるための中核要素であると言えます。
今日のマーケティング活動において、様々なタイムゾーン、地域、言語、デバイスにまたがる多次元のコンテンツを効率よく管理し、コーポレート基準に合わせて、適切なターゲットに一貫した最新のコンテンツを提供し続けることが期待されています。しかしながら、サイロ化された業務プロセスやシステムでは、部門間の連携、既存コンテンツの再利用が簡単にできないのが現状です。
コンテンツの制作とメンテナンス、そしてターゲットグループや地域、チャネルを担当する各部門の全関係者が連携する組織全体のアプローチが不可欠です。言い換えれば、最適なシステム基盤を作ることで、社内に散在するコンテンツを効率よく再利用でき、必要なタイミングで最適な情報を顧客に届けることができます。
包括的なコンテクスト・マーケティング施策が次のような多様なディメンションに対応
ディメンション |
考慮すべき課題 |
例 |
地域/タイムゾーン |
地域の特徴 |
地域性を考慮した異なる商品ポートフォリオ |
言語 |
言語の要件 |
それぞれの販売地域に合わせた商品名 |
ターゲットオ ーディエンス |
ターゲッティングメッセージ |
デバイスとメディアによってカスタマイズされたコンテンツ |
チャネル |
配信チャネル・コミュニケーション |
販売戦略に沿った柔軟に展開するマルチチャネルなコンテンツ |
メディア |
オンライン・オフライン |
適切なターゲティングの利用メディアに合わせたターゲットオーディエンス |
セマンティク |
プレスリリースからブログなど、 あらゆる表現形式 |
役立つトレンド情報や技術論文など |
コンテンツの制作からメンテナンス、配信を含む媒体制作は、時間のかかる複雑な作業です。業務効率を最大限に向上させるためには、常に既存コンテンツの再利用・最適化に注力する必要があります。 しかし、コンテンツ再利用の戦略が、連携・協業作業を妨げる分散化・サイロ化されたシステム環境がゆえに成功しないケースがほとんどです。
その原因として、主に次の要因が挙げられます。
コンテクスト・マーケティング戦略を成功させるには、多次元のデータの統合や効率的な管理がもちろん、各拠点を含む組織全体で遵守すべき規則、権限管理/承認プロセスを追跡することも重要です。 履歴管理やコンプライアンスの重要性が一層高まっています。媒体制作業務プロセスの最適化に止まらず、著作権管理と法的責任の回避において、ユーザの役割/権限に基づいたアクセス制御が不可欠です。
様々なシステム、チャネル、タイムゾーンにまたがる複雑な媒体制作業務において、以下の課題に悩まされることが少なくありません。
多くの企業は、媒体制作において外部制作プロダクションやフリーランサーを活用しています。特定の情報の秘密性、あるいはリリース日を厳密に守る必要性など法的結果を生じさせる側面においても、コンプライアンス対応が求められます。これらの要件を満たすには、業務プロセスが明確に定義されることが不可欠です。
加えて、社内外の関係者が関わる大量のコンテンツ制作・管理を必要とする多くのコンテンツ管理環境では、最も重要なコンテンツのライフサイクル管理が欠けています。現行のコンテンツ管理インフラストラクチャでは、プロセスを可視化できなければ、繰り返し発生するプロセスの最適化や標準化が不完全であることがまだ認識されていないのが現状です。
マーケティングコミュニケーションにおいて、企業が直面している主な課題とは何でしょうか。持続可能な成功戦略の3つの柱となる多様なチャネル、アプリケーション、プロセスの「標準化、統合、一元管理」であることが明らかです。そのため、今後のマーケティングにとっての急所となるのは、システムの整備です。
Contentservではこれらの課題を解決するソリューションとして商品情報管理(PIM)ソリューション、デジタルアセット管理(DAM)ソリューションをご提供しています。
本シリーズの第2部では、コンテンツ・エンジニアリングの活用とそのメリットについて紹介します。
※本記事の内容は、Contentserv「Consistency in All Dimensions ~ Content Engineering for the Marketing of the Future 」英語版ホワイトペーパーの訳です。